こきりこ節「ささら」はどう鳴らす?不思議な仕組みから購入相場まで徹底解説
富山県南砺市の世界遺産・五箇山地方に伝わる日本最古の民謡「こきりこ節」。哀愁を帯びた旋律とともに鳴り響く、波打つような木片の乾いた音色は、聴く者を幽玄の世界へと誘います。その象徴ともいえる伝統楽器が「ささら(簓/編木)」です。蛇腹状に連なる木片を手の中で滑らかに波打たせ、リズミカルな音と視覚的な美しさを同時に生み出すこの楽器は、古くから神仏への祈りや人々の生活感情を表現してきました。
近年では地域の伝統芸能の継承のみならず、小中学校の音楽教育や舞台芸術、民芸品愛好家の間でも再評価が進んでいます。本稿では、ささらの構造的仕組みから独特な鳴らし方のコツ、歴史的背景や歌詞の真意、さらには購入方法や価格相場に至るまで、現場の知見を交えて徹底的に紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:ささらは108枚前後のヒノキやスギの薄板を紐で編み込んだ蛇腹状の打楽器で、百八の煩悩を払う意味を持つ。
- 要点2:「びんざさら(田楽用)」と「こきりこささら(民謡用)」は板の枚数や演舞形態、持ち方に明確な構造差が存在する。
- 要点3:練習用なら3,000円〜6,000円台、五箇山の職人が手掛ける本寸法の本格品は1万円〜2万円超で入手可能。
【構造の秘密】こきりこささらの仕組みと鳴らし方の実践的コツ
こきりこ節で用いられるささらは、短冊状の木片(主にヒノキやスギ)を横一列に並べ、上部を麻紐やタコ糸などで細かく編み上げた構造をしています。木片の枚数は一般的に108枚とされ、仏教思想における「百八の煩悩」を打ち払う願いが込められているのが特徴です。
蛇腹状に連結された両端には木製の持ち手(握り手)が付いており、両手でアーチ状に構えて瞬時に打ち合わせる、あるいは波打たせることで、木片同士が連鎖的にぶつかり合い「ザッ」「シャッ」という小気味よい摩擦・衝突音を響かせます。
実際に澄んだ音色を鳴らすための基本所作とポイントは次の通りです。
- 基本の持ち方:両端の持ち手を親指と人差し指・中指で軽く挟むように持ち、手首の力を抜いて自然なアーチ(半円)を作ります。
- 波打ちの技(ウェーブ):左右の手首を交互に前後に返すことで、108枚の木片が波のように流れる視覚効果と連続音を生み出します。
- 打ち鳴らし(アタック音):両手を素早く中央に引き寄せ、一瞬で木片同士を密着させてから瞬時に広げます。力任せに叩くのではなく、手首のスナップと遠心力を利用するのが美しい余韻を残す秘訣です。

【比較検証】びんざさらとこきりこささらの決定的な違い
民俗芸能や伝統楽器の愛好家の間でも混同されやすいのが、東京・浅草神社の三社祭などで知られる「びんざさら(編木)」と、富山県南砺市・五箇山の「こきりこささら」の違いです。両者は共通の起源を持ちながらも、時代と地域、芸能の変遷によって明確な違いが生じています。
| 項目 | 五箇山・こきりこささら | 浅草等・びんざさら(田楽) | 編集部の着眼点 |
|---|---|---|---|
| 主たる用途・芸能 | こきりこ節(民謡・輪踊り・舞台) | びんざさら舞(神社奉納の田楽舞) | 民謡舞踊と神事田楽の機能差 |
| 木片の枚数・規模 | 標準108枚(携帯・演舞に適したサイズ) | 108枚〜120枚超(重厚で大型のものが多い) | 煩悩の数(108)を基本とする共通性 |
| 使用素材 | ヒノキ、スギ、竹の持ち手 | ヒノキ、シオン、鯨ひげ(連結部など) | 五箇山産は地域の針葉樹を活かした軽量設計 |
| 踊り手と装束 | 綾藺笠(あやいがさ)に麻の直垂(ひたたれ) | 袴姿に中折れ烏帽子、または装飾衣装 | 山間部の中世風俗を色濃く残す五箇山の独自性 |
【歴史と由来】日本最古の民謡「こきりこ節」と歌詞に込められた意味
「こきりこ節」は、大化の改新(645年)前後に端を発するとも伝えられる日本屈指の歴史を誇る古代民謡です。越中・五箇山(現在の富山県南砺市上平地域)の山深い隠れ里で、農作業の合間や収穫祭、神仏への祈りの場として大切に歌い継がれてきました。昭和初期には民俗学者や音楽家によってその原初的な美しさが再発見され、国指定の無形民俗文化財として保護されています。
歌詞の中に出てくる代表的な一節「こきりこの竹は 七寸五分(しちすんごぶ)じゃ 節の窓から 月を見る」というフレーズは、長さ約23センチメートル(七寸五分)に切った2本の細竹(こきりこ竹)を打ち鳴らす様子を唄ったものです。また、「向かいの山に 光るもの何じゃ」に始まる問いかけには、過酷な山岳地帯で自然と共に生きた人々の素朴な信仰心や、厳しい生活の中に宿る幽玄な叙情性が色濃く投影されています。
こきりこ節で使用される楽器構成は、ささらのほかに「こきりこ竹(打竹)」「締太鼓」「篠笛」「胡弓(または三味線)」などが組み合わされ、素朴ながらも重層的な音空間を形成します。

【実態検証】五箇山こきりこ祭りとささら踊りの現場
毎年9月25日・26日、富山県南砺市上平地域の「上梨白山宮」境内を中心に開催される「五箇山こきりこ祭り」では、本場のささら踊りを間近で体感することができます。夕闇が迫る境内に篝火が焚かれ、菅笠を深くかぶった踊り手が優雅かつダイナミックにささらを翻す姿は、まさに生きた中世絵巻です。
地元保存会の演者や長年祭礼を見守る関係者の証言によると、「ささらは単に音を出す道具ではなく、踊り手の手足の延長であり、祈りの軌跡を描くための神具」と捉えられています。激しい回転運動と静かな足裁きのコントラストの中で、一斉に鳴り響くささらの炸裂音は、静寂な山林に吸い込まれるような清澄な緊張感をもたらします。
祭りの舞台では一般観光客向けの体験コーナーや輪踊り講習も行われており、実際にささらを手にした来場者からは「見た目以上に手首の返しが繊細で奥が深い」「板が連動して流れる感覚が心地よい」といった感嘆の声が寄せられています。
【購入と相場】ささらの販売店・価格帯と自作(作り方)の難易度
「自分でもささらを鳴らしてみたい」「学校や地域サークルで導入したい」という方に向けて、入手ルートと相場情報を整理しました。
- 民芸品店・観光物産館(五箇山周辺):五箇山観光案内所や道の駅などで、職人手作りの本格的なささらが直接販売されています。価格は普及品で4,000円〜7,000円、厳選素材の本寸法品で10,000円〜18,000円程度です。
- 和楽器専門店・大手ECサイト:全国の和楽器店やオンラインショップでも購入可能です。教育用の簡易モデルは3,000円前後から流通しています。
- 自作(DIY)について:108枚の木片を均一な寸法(約15cm×2.5cm×厚さ2〜3mm)で切り出し、穴あけ加工と緻密な紐編みを行う必要があるため、自作難易度は極めて高い部類に入ります。木片のわずかな厚みのバラつきが音色の濁りにつながるため、初心者は信頼できる既製品の購入が推奨されます。
【プロの結論】購入・導入時に失敗しないための判断基準
おすすめできる人:
- 伝統芸能や民謡の伴奏を本格的に学びたい方
- パーカッションや演劇の舞台演出で唯一無二の特殊音効果を取り入れたい演奏家
- 五箇山の歴史文化を愛し、高品質な伝統工芸品を手元に置きたい方
慎重に検討すべき人:
- 防音設備のない集合住宅で深夜に練習したい方(木片が打ち合わさるアタック音は高音域で遠くまで響きます)
- 湿度変化や水濡れが激しい屋外環境でのみ使用する予定の方(天然木と麻紐でできているため、湿気による反りやカビに注意が必要です)

【こ きりこ ささら】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:初心者でもすぐに良い音を鳴らせますか?
A1:蛇腹を広げて閉じるシンプルな動作であれば、初心者でも数分の練習で音を出すことができます。ただし、五箇山の踊り手のように「波打つようなウェーブ」を均一に描くには、手首の柔軟性とスナップを効かせる反復練習が必要です。
Q2:ささらのお手入れや保管で気をつけるべきことは?
A2:ささらは無垢の木材と天然繊維の紐で構成されているため、直射日光や高温多湿、極度の乾燥を嫌います。使用後は乾いた布で手の油分や汗を拭き取り、風通しの良い日陰で平らまたは吊るした状態で保管してください。
Q3:こきりこ節の「こきりこ」と「ささら」は同じ楽器ですか?
A3:別々の楽器です。「こきりこ」は長さ約23cmの2本の竹(打竹)を打ち鳴らす楽器を指し、「ささら」は108枚の木片を紐で編んだ蛇腹状の楽器を指します。こきりこ節では両方が重要な役割を果たします。
まとめ:伝統の響きを次世代へ紡ぐ「ささら」の魅力
五箇山の深い山懐で育まれた「こきりこ節」と、その調べを彩る「ささら」。108枚の木片が織りなすその音色は、単なるリズム楽器の枠を超え、自然への感謝や人間の祈りを内包した豊かな文化遺産です。構造の妙や正しい鳴らし方を理解し、五箇山の風土に思いを馳せながらその音色に耳を傾けることで、日本の伝統音楽が持つ奥行きをより一層深く体感できるでしょう。 (出典: こ きりこ ささら(Yahoo!ニュース))